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不動産セキュリティトークンの代表的な商品5選の特徴と違い

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はじめに

不動産セキュリティトークンは、ブロックチェーン技術を活用して不動産をデジタル証券化した新しい投資手法です。少額から投資できるうえ、運用内容や分配金が透明に管理される仕組みが整いつつあります。近年はホテルやレジデンスなど、実際の不動産を裏付けとする銘柄が増えており、個人投資家でも現物不動産に近いリターンを狙える環境が整ってきました。

本記事では、国内で発行された代表的な不動産セキュリティトークン5商品を取り上げ、それぞれの特徴や利回り、販売スキームの違いを比較します。これからST投資を検討している方は、自身に合った投資判断の参考にしてみてください。

不動産セキュリティトークンの売買方法

不動産セキュリティトークンは証券会社で購入するのが一般的です。デジタル証券のみを扱っている証券会社もあれば、一般によく知られる大手証券会社が取り扱う商品もあります。途中売却も可能な商品ですが、2025年時点では販売した証券会社に売却を相談するケースが多いと想定されます。

一つの商品の購入タイミングは大きく分けて2つにわかれます。一つは募集時に購入する方法です。不動産セキュリティトークンは、不動産会社等がセキュリティトークンを通じて資金調達する「STO」を実施するときに発行されます。

投資先物件や利回り、運用期間などの基本情報が公開されるため、投資家はそれを参照して投資の是非を判断します。募集は期間が決められていて、期間が終われば募集時の購入はできなくなります。

セキュリティトークンは、発行済の商品を流通市場で購入することも可能です。SBIや野村證券のような大手証券会社の一部では、発行済セキュリティトークンの売買プラットフォームを用意しています。また「大阪デジタルエクスチェンジ株式会社」という会社が運営する私設取引システム「START」を通じて売買ができる銘柄もあります。

上場株などと比べるとまだまだ取引は活発とは言えませんが、銘柄によっては、途中売買が可能な仕組みが整いつつあるのが、セキュリティトークンの特徴です。

不動産セキュリティトークンの代表的な商品5選

不動産セキュリティトークンの商品は着実に増えてきています。ここでは過去に募集されたセキュリティトークンについて、商品性や特徴などを紹介していきます。流通市場で今からの購入が可能なものと入手が困難なものがあります。ここでは両方のケースの商品を紹介するので、不動産セキュリティトークンを理解するうえでの参考としてください。

ケネディクス・リアルティ・トークン ドーミーイン神戸元町(デジタル名義書換方式)

不動産ファンドの運用を手掛ける、ケネディクス社のセキュリティトークン銘柄です。ファンド名のとおり、神戸元町にある大手ホテルチェーン「ドーミーイン」へ投資するファンドです。

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名称ケネディクス・リアルティ・トークン ドーミーイン神戸元町
1口当たり発行価格10万円
運用期間2023年12月22日~2038年8月31日|14年8か月
予想年間分配金1回あたり2,350円(年2回)
投資先の特徴ビジネスホテル
参考予想利回り4.79%

投資先のホテル「ドーミーイン神戸元町」は、神戸市元町駅まで徒歩4分の場所にあるビジネスホテルです。三宮や北野、有馬温泉、メリケンパーク・ハーバーランドなど、神戸市の観光スポットにもアクセスしやすいため、観光需要も期待できるホテルです。

全284室にシモンズ社製ベッドの導入していて、寝心地のよい部屋を実現させています。また、最上階にある広々とした大浴場も特徴の一つです。他のドーミーイン系列のホテル同様、夜泣きそばの無料サービスもあります。

運用は2023年8月31日まで続く見込みで、セキュリティトークンとしては超長期な運用を行うファンドです。本ファンドは大阪デジタルエクスチェンジ株式会社を通じて流通市場での売買ができるファンドです。SBI証券・大和証券などの大手証券会社から、私設取引所「START」にアクセスして入手できます。

本ファンドの投資先であるホテルは、共立メンテナンスとの固定賃料による長期賃貸借契約を締結しています。ホテルの稼働率に関わらず賃料は固定なので、毎年安定した分配金収入が期待できる商品性です。

いちごレジデンストークン 芝公園・東新宿・都立大学・門前仲町・高井戸・新小岩(デジタル名義書換方式)

不動産運用会社大手のいちごグループが組成したセキュリティトークンです。こちらも「START」取扱銘柄なので、2025年現在でもSBI証券や大和証券を通じて発注ができます。

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名称いちごレジデンストークン 芝公園・東新宿・都立大学・門前仲町・高井戸・新小岩
1口当たり発行価格10万円
運用期間2023年12月22日~2031年1月31日(7年1か月間)
予想年間分配金年間4,100円
投資先の特徴都内のレジデンス(マンション)
参考予想利回り4.01%

こちらは次の6つの物件に分散投資する商品となっています。

  • GRAN PASEO芝公園(所在地:東京都港区芝二丁目15番14号)
  • GRAN PASEO東新宿(所在地:東京都新宿区新宿六丁目20番4号)
  • PASEO都立大学North・South(所在地:(North)東京都目黒区平町二丁目8番13号、(South)東京都目黒区平町二丁目8番8号)
  • GRAN PASEO門前仲町(所在地:東京都江東区牡丹一丁目6番11号)
  • GRAN PASEO高井戸(所在地:東京都杉並区高井戸東二丁目25番17号)
  • THE PASEO新小岩II(所在地:東京都葛飾区新小岩三丁目2番16号)

10万円程度の少額で都内の優良物件複数に投資して、安定した分配金収益が期待できるのが特徴です。都心部とあって、全ての物件が最寄り駅から徒歩10分以内の利便性の高い場所にあります。

本件は、SPCを活用した倒産隔離が働くスキームを取っています。投資対象資産をSPCに譲渡することにより、元の不動産保有企業が倒産しても、SPCの資産が弁済等に使われて投資家が不利益を被るリスクを限定してくれる仕組みです。

不動産クラウドファンディングは、ファンドによっては倒産隔離の仕組みが充分に取られていない場合もあるので、この点は投資するうえで安心材料となります。

MUFGリアルティ・トークン渋谷神泉・両国森下(デジタル名義書換方式)

こちらのセキュリティトークンは、合同会社フォーリヤが三菱UFJ信託銀行株式会社に保有物件を委託する形で運用される商品です。2025年10月30日に払込期日を迎えたばかりの比較的新しい商品となります。

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名称MUFGリアルティ・トークン渋谷神泉・両国森下(デジタル名義書換方式)
1口当たり発行価格10万円
運用期間原則として約5年(2025/10/30~2030/11/1)
・アセット・マネージャーの判断により、運用開始の2年後以降の早期償還または約2年を限度とする運用期間延長の可能性あり
予想分配金利回り1回あたり1,765円(1口あたり・年2回分配)
投資先の特徴東京都心部のレンジデンス
予想利回り3.50%

こちらは、以下の2つの物件に投資するセキュリティトークンです。

  • エムレジデンス渋谷神泉
  • エムレジデンス両国森下

エムレジデンス渋谷神泉は、京王井の頭線「神泉」駅 徒歩約8分、東急田園都市線「池尻大橋」駅 徒歩9分など複数の駅が徒歩圏にある好立地のレジデンスです。本物件が所在する目黒区青葉台四丁目は北に松濤、西には東京大学駒場地区キャンパス、南には大名庭園跡・旧朝倉家住宅、各国大使館などが点在する魅力的なエリアです。渋谷からほど近く通勤・通学・ショッピングにも便利です。

エムレジデンス両国森下は、都営新宿線・大江戸線「森下」駅 徒歩約8分、JR中央・総武線「両国」駅徒歩約10分の距離に位置します。鉄道を利用すれば新宿・六本木・日本橋などの主要エリアへダイレクトアクセスが可能です。通勤・通学に便利でありながら、周辺には隅田川沿いの遊歩道や公園、静かな住宅街が広がり、住みよい住環境が特徴です。

また本セキュリティトークンは株式会社Progmatが保有するデジタル証券の発行および管理プラットフォーム「Progmat」を活用して発行されます。2026年5月1日に終了する信託計算期間の終了後に最初に到来する決算発表日の翌営業日より売却可能となる予定です。

現時点ではSTART未登録ですが今後登録の予定があり、実現すればSTART経由での売買が可能となります。万が一START登録が叶わなかった場合も、相対取引での売買対応を予定しています。

ホテルトークン 悠洛・京都三条 (譲渡制限付)

野村證券で過去に募集された銘柄で、2024年3月より運用が始まっています。野村證券Webサイト上では途中売買を取り扱っていないため、現状は購入する機会が基本的にはないと考えられます。

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名称ホテルトークン 悠洛・京都三条 (譲渡制限付)
1口当たり発行価格100万円
運用期間償還予定日まで原則5年(基本は2029年5月に償還予定)
ただし、2026年11月期末の翌日以降、本件不動産受益権を早期売却することがあるため、売却がされた場合は、償還予定日より早期に償還される。また3年間を限度として運用期間の延長を決定する場合あり。
予想年間分配金年間35,000円
投資先の特徴京都のホテル
予想利回り3.50%

こちらはホテル不動産の運用自体はりそなグループが行っています。世界的な観光地である京都のホテル運用を通じてインバウンド需要を追い風として、安定した運用益を投資家にもたらすことをコンセプトとしたセキュリティトークンです。

投資先はラグジュアリーホテル「バンヤンツリー」の姉妹ブランドである「ダーワ」が、日本で初めて手がけたホテル「ダーワ・悠洛 京都」です。京都市営地下鉄東西線「三条京阪」駅徒歩約1分、京阪本線「三条」駅徒歩約3分と、観光客にとっても便利な好立地な場所にあります。

和と洋、レトロ・モダンが調和した大正ロマンを彷彿とさせるデザインが特徴です。京都の都心部にあり、ショッピングや祇園などの花街、そして社寺仏閣や美術館へのアクセスも良好です。

2025年5月期(第2期)の基準価額確定値は1,016,478円です。運用終了時に基準価額が当初の投資元本を上回っていれば、償還益を獲得できる可能性があります。

野村證券のWebサイト上では「流動性は限られており、売却の機会は保証されておりません。また、譲渡制限が付されている場合があります。」と記載があります。2025年10月時点では、Web上での売却方法は特に明記されていません。

「譲渡制限」が付されていますが、具体的な制限内容も非公開です(購入時に目論見書等では確認できたものと推測されます)。START登録銘柄と比べて流動性が低く、基本的には満期までの保有を想定した商品性となっています。なお、こちらの商品も「特定受益証券発行信託」の方式を活用した倒産隔離の機能が備わっています。

三井物産グループのデジタル証券〜川崎・商業〜譲渡制限付

5つめは、三井物産デジタル・アセットマネジメントが手掛けるセキュリティトークンを紹介します。こちらは「Alterna」というプラットフォームで過去に販売された商品です。

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名称三井物産グループのデジタル証券~川崎・商業~(譲渡制限付)
1口当たり発行価格9,560円(ただし10口単位での販売)
運用期間約5年2ヶ月(2030年10月末日 償還予定)
・アセット・マネージャーが知る限りにおいて、お客様の利益最大化に資すると判断する売却機会を得た場合には、早期売却(2025年9月12日以降)する場合あり
・利益最大化のため期間延長が必要と判断した場合には最大1年間(2031年10月末日まで)の期間延長をする場合あり
予想年間分配金2026年 4月期 289円(予想分配金利回り 年4.6%)
2026年 10月期 225円(予想分配金利回り 年4.5%)
投資先の特徴川崎の複合商業施設
予想利回り4.50%

こちらのセキュリティトークンは川崎市内の生活密着型の複合商業施設「宮前ショッピングセンター」に投資します。公式Web上で公開されているテナントはこちらです。

  • マルエツ
  • ビバホーム
  • 飲食店(2店舗)
  • ドラッグストア
  • クリニック(2店舗)
  • 100円ショップ
  • フィットネス
  • 美容院
  • 宝くじ

大型テナント(マルエツ・ビバホーム)が長期間継続入居していて、コロナ禍の売上の減少も小さく、安定稼働を継続しています。田園都市線沿線で、物件周辺5kmに約82万人が居住 する安定した商圏が形成されています。

さらに、分配金の源泉となる賃料はすべて固定契約となっていて、売上の上下の影響等を受けにくいのが特徴です。不確実性はゼロではないものの、安定した分配金収入が期待できます。

Alternaのファンドは、同プラットフォームのなかで時期によっては売却が可能です。本ファンドの場合は4月末・10月末の各決算期末から次の決算発表の間には譲渡制限がかかりますが、それ以外の時期には売却の手続きが可能です。

投資先とスキームを踏まえて投資銘柄を決めよう

不動産セキュリティトークンは、まだ市場が発展途上であることもあり、販売スキームにばらつきが見られるのが特徴です。SBI証券・大和証券で取り扱うSTART登録銘柄は比較的柔軟な売買ができる仕組みが整っていますが、市場参加者が限られているため、実際には取引に時間がかかると考えておいた方が良いでしょう。

野村證券の商品については満期まで売却できない可能性が相応にあります。また、Alternaは比較的不動産クラウドファンディングに近い仕組みで、独自のセキュリティトークンのみを取り扱うプラットフォームとして発展しています。投資先の不動産に加えて、売買のしやすさや最低投資金額なども踏まえながら、自分に合った商品を選びましょう。

2025年10月28日時点の情報をもとに記事を作成しています。

Fin/D編集部編集者

株式会社ヒカリナ

20年にわたりネット証券・銀行など金融サービスの改善業務、コンテンツ企画制作を担当してきたメンバー、各種金融事業者での実務経験者、各種資格保有者で構成しています。豊かな人生を送るための基本とも言える金融商品・サービスについて中立的な視点で分かりやすく提供しています。

伊藤 圭佑監修者

証券会社、外資系資産運用会社で約14年の勤務経験を持つ。また、個人投資家として15年以上の資産運用経験を持ち、投資信託、株、ETF、不動産、FX、クラウドファンディングなどへ投資。キャリアを通じた専門性と個人投資家の経験を生かし、金融や不動産投資、経済関連の情報提供を行なっている。証券アナリスト、FP3級保有。