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- はじめに
不動産クラウドファンディングは、少額から不動産投資ができて相対的に安定したリターンが期待できる金融商品として、近年急速に普及しました。しかし、投資である以上は、失敗して損失を出すリスクがある点に注意が必要です。
今回の記事では、不動産クラウドファンディングでの運用の失敗について実例と共に紹介します。また後半では、失敗による損失を減らすための運用の工夫をまとめました。不動産クラウドファンディングによる不動産投資を進めようとしている方は、ぜひ参考にしてください。
不動産クラウドファンディングのよくある失敗例
不動産クラウドファンディング投資を行っていてよくある失敗例としては、次のようなものがあります。
- 失敗例1
ファンドになかなか投資できない
- 失敗例2
中途換金できないため資金繰りに困る
- 失敗例3
利回りが想定利回りを下回った
- 失敗例4
償還遅延・分配金の未払いが発生
- 失敗例5
事業者の不祥事により損害を受ける
- 失敗例6
元本割れが起きた
- 失敗例7
確定申告をし忘れた
それぞれの失敗例について、詳しく紹介していきます。
失敗例1ファンドになかなか投資できない
最も身近な失敗例の一つは、ファンドに投資できないことです。不動産投資クラウドファンディングは株や公募投資信託などと異なり、一つのファンドの募集額や募集期間が決まっています。募集期間を過ぎたり、募集額が埋まったりすれば投資できません。
知名度や実績のあるファンドは多くの投資家が登録しているため、短期間の内に締め切られる場合もあります。募集が過熱すると、数分以内に完売するケースも見られるほどです。結果として、せっかく口座を開設してもなかなか投資機会を得られない投資家も少なくありません。
失敗例2中途換金できないため資金繰りに困る
不動産クラウドファンディングは、基本的に募集時に運用期間が決められています。流動性の高い商品ではないため、多くの商品は途中換金や売却ができません。
したがって、投資に要した資金は、償還が到来するまで使用できなくなります。仮に投資開始後に現金が枯渇して資金繰りに困っても、中途換金に対応したファンドでない限り、現金化して現金を補充することはできません。
失敗例3利回りが想定利回りを下回った
最終的な利回りが、募集時に提示されていた想定利回りを下回るリスクがあります。ほとんどの不動産クラウドファンディングでは、募集時に「想定利回り」「予定利回り」などの名目で利回りが提示されています。
ここで注意したいのは、実際の利回りはあくまで運用終了時に明らかになる点です。不動産に限らず、投資には一般に不確実性があるため、投資開始前に利回りを確定することはできません。不動産クラウドファンディングでは、賃料収入の減少やファンド償還時の売却価格の低下などにより当初想定していた利回りが達成されないケースが考えられます。
失敗例4分配金の未払い・償還遅延が発生
投資先の不動産の運用が予定通り進まないと、分配金の未払いや償還遅延が発生するケースが想定されます。
空室発生により想定通りの賃料収入が得られない、賃料回収が進まないなどの要因で、投資家に想定した分配金を還元できないリスクがあります。また、満期近くで物件の処分が進まないなどの理由で、償還が遅延する可能性もあるでしょう。
一時的に分配金の未払い・償還遅延が発生しても、状況が改善して後で利払い・償還が実施されるケースも少なくありません。それでも、本来想定していたタイミングで現金が入らないため、資産運用の計画に支障がでるおそれがあります。
失敗例5元本割れが起きた
不動産クラウドファンディングにおける元本割れとは、満期における償還金が投資金額を下回る事態をいいます。正常償還するとき、ほとんどの不動産クラウドファンディングは満期時に投資元本と同額か、最後の利払いと合算して投資元本以上の金額を受け取れるスキームです。
しかし、市況が悪化して不動産を当初想定した価格で処分できないリスクがあります。不動産の売却によって投資家の償還金を確保できなければ、元本割れした形で償還されるリスクがあります。
失敗例6事業者の不祥事・運用失敗により損害を受ける
事業者の不祥事や運用失敗により、投資家に損害が及ぶリスクもあります。過去には事業者が業務停止処分をうけて、ファンド運営に支障を及ぼした事例もありました。事業者が正常な業務ができなくなると、投資先には問題がなくとも利払いや償還の手続きに支障が出るリスクがあります。
さらに、事業者が倒産すれば、投資家の損失が大きくなるリスクがあります。不動産クラウドファンディングは、事業者の経営悪化や倒産から投資家を守る「倒産隔離」の仕組みが弱いスキームのファンドが多く見られます。
いざ倒産すると、投資家とそれ以外の債権者へ弁済に使用する資産と資産の区分けや弁済手続きに多くの時間を要します。倒産時の財務状況次第では、最終的に投資元本よりも大幅に償還金額が減らされるリスクが高いのです。
失敗例7確定申告をし忘れた
本来必要な確定申告を怠って、追徴課税を課される失敗例もあります。不動産クラウドファンディングで得た分配金や償還時の利益は、多くの場合は雑所得です。雑所得の合計が年間20万円を超えると、確定申告が必須となります。
そのほかにもたとえば以下のような方は、確定申告が必要です。
- 2ヶ所以上の就業先から一定の収入を得ている人
- 年収2,000万円以上の会社員
- ふるさと納税や医療費控除を受けたい人
- 公的年金の収入金額(源泉徴収が対象となる場合)が400万円を超える人
- 不動産など雑所得・給与所得以外の所得があった人
すでに確定申告をしている方は、クラウドファンディングで得た所得も合わせて申告しなければなりません。
不動産クラウドファンディングでは、分配時に源泉徴収で自動的に税金が控除されるため「源泉徴収で税金支払いが完了している」と誤解しがちです。しかし、確定申告が必要な要件に当てはまる方は、申告で正しい税金額を計算して納税しなければ、義務を果たしたことにはなりません。
不動産クラウドファンディングでの失敗を防ぐ対策
不動産クラウドファンディングの失敗を防ぐ、ダメージを抑える対策としては、次のような方法が有効です。
- 対策1
複数の事業者に資金を分散する
- 対策2
ファンド募集のスケジュールを整理しておく
- 対策3
実績を確認して信頼できる事業者を利用する
- 対策4
投資物件の情報を確認して投資先を決める
- 対策5
リスク軽減策が取られたファンドに投資する
- 対策6
資金計画を立てて資金面の余力を維持する
- 対策7
不動産クラウドファンディング投資に必要な基礎知識を習得する
投資である以上リスクをゼロにはできませんが、以上のポイントをおさえて堅実な資産運用を心がけましょう。
対策1複数の事業者に資金を分散する
複数の不動産クラウドファンディング事業者に、資金を分散して投資しましょう。投資先の分散は、大きな損失リスクを抑えるうえでの基本です。
不動産クラウドファンディングは、事業者によって投資先や利回り、ファンド運用期間などの特性が大きく異なります。そのため複数の事業者を併用したほうが、分散効果が高まるでしょう。
また、一つの事業者がファンド募集する頻度は必ずしも多くありません。事業者の併用した方が、募集ファンドに接するタイミングが増えて投資できるチャンスも増えます。倒産や不祥事など事業者の固有リスクの緩和にもつながります。
対策2ファンド募集のスケジュールを整理しておく
事業者各社の情報を継続的に収集して、ファンド募集のスケジュールを整理しておきましょう。不動産クラウドファンディングは、ファンドの募集期間にしか投資ができません。
人気ファンドは、募集開始後すぐに満額となって締め切られるケースもあります。あらかじめファンドの募集スケジュールを把握しておいて、募集開始直後に応募することで、投資回数を増やすことが可能です。
対策3実績を確認して信頼できる事業者を利用する
投資するファンドが運営する事業者の特性や実績を確認したうえで、信頼できる業者を利用しましょう。事業者のファンドの運用実績・償還実績や経営状況、ビジネスモデルなどが主な着眼点です。
ファンドの募集回数や募集総額が多い事業者ば、実績が充分あるといえます。正常償還実績が豊富であれば、元本割れが起こりにくいと期待されるため安心です。ファンドの募集頻度が多い事業者の方が、投資機会が豊富である点でも評価できます。
事業者の経営状況についてもみておきましょう。不動産クラウドファンディングの企業は、必ずしもファンド事業だけを行っているとは限りません。ファンド事業に問題がなくとも、他の事業の失敗により経営悪化・倒産が起こるリスクもあります。毎年着実に利益を創出して、健全に成長している事業者が理想です。
ビジネスモデルも重要です。不動産クラウドファンディングでは、グループ企業が不動産の開発・経営を行う構造が多く見られます。一方で、物件の取得は行う一方、開発や経営を他社が担って利益還元を受ける仕組みも考えられます。
日本全国、特定地域のみ、海外不動産も投資するなど、投資地域に特色がある事業者もあります。ビジネスモデルを確認したうえで、安定運営が期待できる事業者を選びましょう。
対策4投資物件の情報を確認して投資先を決める
投資物件の特性までしっかりと確認して、安定した運用が期待できるファンドに投資しましょう。投資ファンドを選ぶときは、つい利回りや運用期間など表面的な情報に着目しがちです。
不動産クラウドファンディングは、あくまで不動産投資の一種であることを理解し、投資物件の特性を捉える必要があります。オフィス・住居など投資物件のタイプや投資地域、物件の規模などをみておきましょう。
ファンドによっては、物件のバリューアップや売却の方針が書かれている場合もあります。売却戦略が堅実であれば、償還時の元本割れリスクも小さいと期待されます。
対策5リスク軽減策が取られたファンドに投資する
リスク軽減策が適切に取られたファンドを選んで投資しましょう。不動産投資クラウドファンディングは、物件の収益性以外に次のような点で投資家の損失リスクを抑制しています。
- 優先・劣後構造
- マスターリース契約
- SPCを活用した倒産隔離
優先劣後構造は、事業者もしくはその関連企業がファンドに無限責任での劣後出資をし、一般投資家が優先出資となる構造です。一定の損失は劣後出資者が引き受けるため、投資家に損失が及びません。劣後比率が高いファンドほど、投資家への損失波及リスクは低いといえます。
マスターリース契約で、賃料収入の安定性を確保するファンドもみられます。別の不動産管理者と賃料固定の賃貸契約を結び、実際のファンド運営を契約先の業者が実施する仕組みです。契約先の事業者が存続する限りにおいては、空室率に関係なく決まった賃料がファンドに入るため、ファンドのリターン安定化に寄与します。
最後にSPCを活用した倒産隔離です。事業者とは別のSPC(特定目的会社)を設立して、SPCが投資を行う形態とすることで、事業者の倒産等の影響が投資資産に及ばない仕組みとするものです。
機関投資家向けの不動産ファンドではごく一般的なスキームですが、実は不動産クラウドファンディングで本スキームを取り入れているファンドは多くありません。たとえばLEVECHYなどが同スキームを導入しています。その他多くのファンドは倒産隔離の仕組みがなく、事業者の倒産の影響を受けるリスクがある点に注意が必要です。
対策6資金計画を立てて資金面の余力を維持する
投資に向けた資金計画をしっかりと立てながら投資を進めて、資金的な余力を残した状態で投資をするのが大切です。不動産クラウドファンディングは、平時には投資期間・償還タイミングや利回りが提示されているため、資金の出入りを予測しやすいといえます。
しかし、今回紹介したような不確実性を踏まえると、手元にある資金をむやみに投資に回すのは考えものです。入金の遅れ等が家計に影響を及ぼすような事態は、避ける必要があります。資金管理をしっかりと行い、不測の事態がおきても安定した投資を継続できる余力を維持しましょう。
対策7不動産クラウドファンディング投資に必要な基礎知識を習得する
不動産クラウドファンディングの投資に必要な基礎知識をもれなく取得したうえで投資を始めましょう。具体的には、次の領域の基礎知識をおさえておく必要があります。
- 不動産投資
- ファンド投資
- 税金・確定申告
不動産クラウドファンディングは手軽に不動産投資ができる金融商品ですが、不動産の知識だけで投資するのはリスクが高いといえます。ファンドの基本的な仕組みを理解したうえで、現物の不動産投資とは異なるリスクを理解して投資を検討しましょう。
税金・確定申告の仕組みへの理解も必要です。現物の不動産投資で得た利益は不動産所得となりますが、ファンド投資の利益は多くの場合雑所得となり、税金の仕組みや確定申告における申告方法も異なります。また源泉徴収で入金時点で一定の税金が控除されるのも、ファンド投資ならではの特徴です。
不動産クラウドファンディングの失敗例と対策を理解して投資しよう
不動産クラウドファンディングは少額から始められ安定した収益が期待できますが、元本割れや償還遅延、事業者の不祥事、確定申告の対応漏れなどさまざまな失敗例があります。平時には安定性していても、潜在的にはさまざまなリスクがある点を理解して、対策をしながら投資を実行しましょう。
募集スケジュールの管理、事業者の実績や物件情報の精査を行い、信頼できる事業者・ファンドへ投資しましょう。また複数事業者への分散投資、余裕を持った資金計画を心がけ、不測の事態が発生しても、安定した投資を継続できる状態を維持するのも大切です。ファンド投資の失敗例をふまえて、しっかりと対策を講じて投資しましょう。
2025年9月29日時点の情報をもとに記事を作成しています。