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- はじめに
アメリカでは2024年9月のFOMCにおいて、2020年以来の利下げが実行されました。アメリカの景気減速やインフレ率の落ち着きを反映した政策変動です。もし今後、金融政策が緩和方向に変化する場合、市場金利にも低下圧力がかかると想定されます。
今回はアメリカの景気動向や金融政策と市場金利の関係性についてまとめました。
市場金利に影響を与える要因とは?
市場金利に影響を与える要因について、次の3点からみていきましょう。
金利水準に影響を与える要因を正しく捉えて、今後の見通しを立てるうえでの参考にしてください。
- 要因1
景気動向
- 要因2
金融政策
- 要因3
為替動向
要因1景気動向
景気動向は市場金利に影響を与える一つの要因となります。景気が拡大傾向にある中では、企業や投資家は積極的に資金を調達して、事業の拡大や投資を進めるようになります。
銀行には多くの借入ニーズが寄せられるため、銀行は金利を引き上げて利ザヤを稼ぎながら貸出を行います。
景気が良好であれば、企業や投資家は充分な収益を獲得できると期待されるため、金利が上昇しても借入を実行しやすいのです。逆に景気が悪化する局面では高金利での資金調達が難しくなるため、借入ニーズが低下し、市場金利に低下圧力がかかります。
要因2金融政策
金融政策は、そもそも市場金利を誘導するのが目的の一つなので、当然ながら金利に影響を与えます。利上げや資産買い入れの停止・資産売却といった金融引き締めは金利上昇、利下げや資産買い入れなどの金融緩和は金利低下のドライバーとなります。
資産買入・売却について少し補足しましょう。現代の中央銀行では、国債などの資産を金融機関から購入して、対価として現金を支払う緩和政策をしばしば実行します。
同政策を通じて、金融機関は資金供給を受けられます。金融機関は手元の現金が増えれば、より多くのお金を貸し付けることで、金利が低くても利益を得られます。このような流れにより、資産買入政策は金利を下げる作用があるのです。資産の買入を止めたり、逆に資産を売却して金融機関から資金を引き上げれば、引き締め効果により金利は上昇します。
なお、金融政策では、どの期間の金利を操作しているのかにも注意が必要です。主要先進国の利下げ・利上げは主に短期金利に適用されるため、短い年限の金利に直接的に作用します。
一方で、日本やアメリカでは長期国債の買い入れを実行していました(日本は2024年9月現在も継続しています)。長期国債というと、しばしば10年前後の国債を指します。長期国債の資産買入政策は、10年あたりの長期金利に作用します。
金融政策の金利への影響を考える時には、金利の上下の方向性に加えて、どの期間の金利に影響を与えるのかもみておく必要があります。
要因3為替動向
為替動向と市場金利は、互いに影響しあう関係にあります。為替の変動要因の一つとして「金利が高い通貨に需要が集まりやすい」という傾向があります。金利が高い通貨の方が、保有期間に応じて魅力的な利息収入が期待できます。そのため、2国間で金利が相対的に高い方の通貨が上がり、低い方が下がるという関係性にあるのです。
近年のドル円はこれが当てはまる典型的な状況でした。アメリカの利上げが進む中で金利差が拡大し、金利の高いドルが買われ、日本円が売られたため、ドル高円安が進行したのです。
一方で、長期で見ると為替が金利に影響を与える場合もあります。ある通貨の下落が進むということは、より多くの人がその通貨を売って他の通貨に変換していることを意味します。すなわち海外資産に資金が流出していくため、下落した通貨の流通は減少します。
次第にその通貨での資金調達が難しくなるため、銀行は金利を引き上げて借入ニーズに対応しようとするでしょう。このように、通貨下落は長期で見ると金利を引き上げる要因となる場合があるのです。
アメリカの利下げや景気減速は金利低下をもたらす
ここまで紹介した基本的な市場金利のメカニズムを基にすると、足元のアメリカの利下げや景気減速は、金利を引き下げる効果を持つことがわかります。
利下げにより短期金利が下がりやすい局面
現在のアメリカの政策金利は「フェデラルファンドレート」という金利の目標値となっています。これは金融機関が1日だけ資金を貸し借りするときに適用される金利なので、端的に言うと短期金利です。
2024年9月のFOMCにて0.5%の利下げが発表されましたが、これは短期金利の引き下げに寄与する政策変更といえます。個人が関係するところでは、預金金利やローンの変動金利などが影響を受ける可能性があります。
ちなみにアメリカの金融政策は、当然ながらアメリカの金利に特に作用します。日本の短期金利に与える影響もゼロではありませんが、日本もまた日銀が金融政策において短期金利の操作を行っています。
状況にもよりますが、足元のように落ち着いた経済環境においては、自国の金融政策の影響の影響の方が大きくなりがちです。
中長期金利は景気減速懸念の影響を受ける
中長期金利は、金融政策の影響がない場合には将来のインフレや景気動向の見通しの影響を受けがちです。足元の状況はやや複雑で、FRBが保有する資産を売却する政策を行っていて、これはどちらかといえば金利上昇に作用する政策です。
他方で、経済については「減速」する見通しが強まっているため、これは金利低下要因となります。2024年9月に実施された利下げは「金融緩和」にあたり、資産の売却は「金融引締」にあたることから、今は一時的に異なる方向を向いた政策を同時に実施している形となります。
今後景気減速への懸念が一段と高まれば、資産売却は終了を迎える可能性もあります。そうなれば、中長期金利も景気減速の予想を反映して低下すると想定されます。
日本の金利への影響は現時点では不透明
ここまで紹介した金利への影響は、主にアメリカの金利への影響であり、日本の金利については分けて考えた方が良いでしょう。まず、日本は現状政策金利がすでに低水準である中、状況次第では追加の利上げの可能性を残しています。
足元のように比較的落ち着いた環境では、自国の金融政策の影響の方が大きく作用します。従って、ゆるやかな金利上昇をもたらす可能性の方が高いでしょう。
また、政策金利ほどクローズアップされませんが、日本は長期にわたり長期国債などの資産買入政策を実施してきました。足元は、資産買入額を徐々に減らす政策を進めており、これも日本の長期金利を引き上げる要因となります。
今後、万が一アメリカの景気が想定よりも悪化して、グローバルに悪影響をもたらす程になれば事情は変わりますが、足元のような状況においては、日本の金利はアメリカの景気減速や金融政策よりも、自国の金融政策の影響を大きく受けると考えられます。
金利の変動要因を正しく理解しておこう
今回の記事では、足元の環境変化を踏まえつつ、金利の変動要因についてまとめました。市場金利は金融政策の影響を色濃く受けつつも、経済の動向や為替の影響を受ける場合もあるのが特徴です。金利の変動要因それぞれを確認して、今後の見通しを立てていきましょう。
アメリカの景気減速リスクに焦点が集まる中で、FRBはさらなる利下げを検討する可能性が高まっています。特に海外資産においては、金利低下が進行する可能性も念頭に置きながら、資産配分や投資戦略を検討しましょう。
日本については、足元はまだ利上げ・資産買入の縮小の途上であるため、むしろ金利が上昇する余地がある状況です。海外の市場金利と当面は方向性が異なる点にも注意しましょう。
2024年9月20日時点の情報をもとに記事を作成しています。