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アメリカの利下げや景気減速は為替へどう影響する?為替の変動要因を確認

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はじめに

アメリカでは2024年9月のFOMCにおいて、2020年以来の利下げが実行されました。アメリカの景気減速やインフレ率の落ち着きを反映した政策変動です。
アメリカの景気動向や金融政策は、しばしば為替相場に影響を及ぼします。今回の記事では、主にドル円にクローズアップして、金融政策や景気変動が為替に及ぼす影響をまとめました。

為替に影響を与える要因とは?

為替の変動要因は多岐にわたるため、その時々の変化の要因を正確に捉えるのはプロでも容易ではありません。大まかに言うと、次のような要因が考えられます。
金利水準に影響を与える要因を正しく捉えて、今後の見通しを立てるうえでの参考にしてください。

要因1

金利差・金融政策

要因2

インフレ率

要因3

景気動向

要因4

貿易収支

要因5

政治的・地政学的リスク

要因1金利差・金融政策

2国間の金利差に影響を与える金融政策の動向は、しばしば為替相場の変動要因となります。投資家や企業は、リスク水準に大きな差がない場合、金利が高い通貨を保有しようとします。そのほうが高い金利収入が期待できるためです。そのため、金利の高い通貨が上がり、低い通貨が下がりやすくなります。

金融政策では、利上げ・利下げや資産買入・売却などを通じて市場金利を操作します。そのため政策変更は今後の金利変動の一因となることから、やはり為替相場にも影響を与えます。具体的には金融緩和を進めるとその通貨は下落しやすく、引き締めると上昇しやすくなります。

要因2インフレ率

インフレは「物価が上昇する」つまりモノの値段が高くなる現象ですが、これは裏を返すと「通貨の実質的な価値が下がっている」と見ることもできます。そのため、インフレが加速する国の通貨は下落しやすい傾向にあるのです。

ただし、より厳密に捉えると「通貨の金利よりもインフレが高い時」に下落する可能性が高くなります。たとえインフレが進行していても、通貨の金利が充分に高ければ、保有することによる金利収入が物価上昇の影響を相殺できるため、インフレの為替相場への影響を抑えられます。

要因3景気動向

景気動向が良好で、経済成長が期待される国の通貨は高くなりやすいといえます。経済成長が期待される国や地域は、より多くの企業や投資家がその国の通貨を保有して投資しようとするためです。

さらに日本円固有の事情として「安全性の高い通貨」と位置づけられる場合もあります。たとえばリーマンショックで全世界の経済が悪化する局面では、日本経済も悪化したにも関らず円高が急速に進みました。景気動向に着目するときは、その影響が他国・自国どちらに及ぶのか、もしくは全世界に影響があるのかどうかをみておきましょう。

要因4貿易収支

貿易収支とは、簡単に言うと輸出額と輸入額の差になります。貿易収支が黒字方向、すなわち輸出額が相対的に増えれば通貨の上昇要因となり、またその逆は下落要因となります。

貿易をする時には、多くの場合商品の仕入れ先の通貨で決済します。そのため、輸出が増えると自国通貨の需要が高まり、逆に輸入が増えると相手国通貨の需要が高まる要因となるのです。

要因5政治的・地政学的リスク

特定地域の政治情勢や他国との関係性の悪化は、その国や周辺国の通貨安の要因となります。また、グローバルに地政学的リスクが高まると、日本円は対ドルで上昇するケースがあります。

日本は他国と比べて地政学的なリスクの影響を受けにくく、日本円は「安全性の高い通貨」であるとしばしばみなされます。先進国通貨、特に米ドルもグローバルに見れば同様の傾向があり、地政学リスクが高まれば需要が高まる傾向にあります。
しかし、日本円やスイスフランなどはさらに安全資産とみられる傾向が強いため、世界情勢が悪化するとドル安円高になりがちです。

アメリカの利下げや景気減速はドル安・円高要因

ここまで紹介した教科書的な為替の変動要因を踏まえると、アメリカの利下げや景気減速はいずれもドル安・円高要因となります。

利下げ・景気減速によりトレンド転換の可能性

ドル円は、2024年7月ごろまで円安が進んでいました。特に日米の金利差が大きい状況が続いていたため、一時は1ドル160円台まで円安が進みました。
2024年9月に実施されたアメリカの利下げは、これまで円安要因のひとつだった日米の金利差が縮小する要因となります。さらに、FRBの見通しでは2024年の金利見通しが4.4%、2025年は3.4%であることから、今後も利下げが複数回おこなわれる可能性が高いとみられます。

また、アメリカは、雇用市場を中心に概して安定した状態が続いていました。現時点でも大幅に悪化したとまでは言えませんが、たとえば失業率は4%を超えるなど、徐々に雇用市場が緩みつつあります。
これらの状況は、ドル需要の減退を通じて、ドル安・円高をもたらす要因となります。

日本の金融政策が円高トレンドを下支え

日本の金融政策は、アメリカとは逆を向いていて、追加利上げのタイミングを伺っている状況です。日本は近年インフレ率が2%台を安定的に上回る環境になっています。
日銀は、過度な金融緩和は将来のインフレや景気変動の幅を大きくするリスクがあるとの考え方から、緩和縮小のタイミングを伺っていました。過度な円安の進行も輸入物価の高騰などの悪影響をもたらすため、緩和縮小を進める後押しとなっています。

2024年3月にはマイナス金利の解除、2024年7月にはゼロ金利の解除を実行しています。日銀がどの程度の為替相場・金利水準をターゲットとしているかは必ずしも明確ではありません。2024年9月ごろの1ドル140円台前半は、長期で見ればまだまだ円安な水準とみることもできるため、今後どこかのタイミングで追加利上げを検討する可能性があるでしょう。

アメリカの利下げと日本の利上げが同時進行する間は、円高ドル安が進みやすい局面となります。

足元は金利や景気動向が為替変動のドライバーに

今回の記事では、為替の変動要因についてまとめました。為替に変動をもたらす要因は多岐にわたります。
近年は金融政策およびそれに伴う金利変動や、景気動向の見通しにより為替変動するケースが散見されます。当面の間はアメリカおよび日本の金融政策の動向や各国中央銀行の情報発信に着目していきましょう。

一方で、世界情勢の悪化やグローバルな経済ショックが起これば、足元と異なる力学でドル円相場が動き始める可能性があります。多岐にわたる要因が変動要因となりうる為替相場の特性を理解して、幅広く情報収集をしながら為替相場の見通しを立てましょう。

2024年9月23日時点の情報をもとに記事を作成しています。

Fin/d編集部執筆者

株式会社ヒカリナ

20年にわたりネット証券・銀行など金融サービスの改善業務、コンテンツ企画制作を担当してきたメンバー、各種金融事業者での実務経験者、各種資格保有者で構成しています。豊かな人生を送るための基本とも言える金融商品・サービスについて中立的な視点で分かりやすく提供しています。

伊藤 圭佑監修者

証券会社、外資系資産運用会社で約14年の勤務経験を持つ。また、個人投資家として15年以上の資産運用経験を持ち、投資信託、株、ETF、不動産、FX、クラウドファンディングなどへ投資。キャリアを通じた専門性と個人投資家の経験を生かし、金融や不動産投資、経済関連の情報提供を行なっている。証券アナリスト、FP3級保有。

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