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- はじめに
不動産投資クラウドファンディングは、少額で不動産投資に取り組む方法の一つです。個人投資家の視点に立つと、現代において不動産へ投資する方法には、次のようなものがあります。
・不動産投資クラウドファンディング
・現物所有による不動産投資
・REIT
・不動産事業者のソーシャルレンディング
今回の記事では、不動産投資クラウドファンディングとそれ以外の投資方法の違いをまとめました。自分に合った不動産投資の方法を模索するうえで、参考にしてください。
不動産投資クラウドファンディングと現物の不動産投資
不動産投資クラウドファンディングは、不動産投資を「少額で」「手軽に」実行する手段として取り組む方が多いといえます。現物の不動産投資との違いは次の通りです。
不動産投資 クラウドファンディング | 現物の不動産投資 | |
---|---|---|
初期投資額 | 1万円~ | 毎月現金収入を得るなら:数百万円~ 赤字でも良いなら:数万円~ |
レバレッジの活用 | 自由にはできない | 投資家の判断でコントロール可能 |
投資の手間 | 小さい | 大きい |
取り組みやすい投資期間 | 数ヶ月~数年 | 数年~数十年 |
投資対象物件 | 多様な物件に投資可能 | 多くの個人は賃貸住宅が中心 |
初期投資額
ファンドにもよりますが、不動産投資クラウドファンディングは1万円から投資可能な銘柄が多くなっています。10万円もあれば大半のファンドに投資できます。
現物での不動産投資は、一般に初期投資額がクラウドファンディングよりも大きくなります。区分マンション投資であれば、数万円~10万円程度の自己資金、フルローンで投資できる物件も見られます。ただし、こうした物件のほとんどは月々の収支がゼロもしくは赤字となるため、ローン完済までほとんど現金収入を得られないか、むしろ手出しとなってしまいます。
一般に不動産投資にイメージされるように、毎月プラスの賃料収入を得たいなら、少なくとも数百万円程度の自己資金が必要です。
レバレッジ効果
不動産投資において「レバレッジ効果」は重要な仕組みです。レバレッジ効果とは、ローンを活用して自己資金より大きな規模の資産へ投資し、収益性を高める手法です。不動産は資産規模と賃料収入の規模がある程度比例するため、借入を活用して大規模な物件を購入した方が潤沢な、賃料収入を得られる場合があります。
現物の不動産投資では、投資家の与信枠やローン借入に伴うコストが制約条件となるものの、ある程度投資家の判断でレバレッジの水準をコントロールして投資が可能です。対して不動産投資クラウドファンディングでは、借入を活用して投資口数自体を増やすことはできません。
たとえば「LEVECHY」のように、ファンド事業者の判断で借入を活用して利回りを高めているファンドも一部あります。しかし、投資家が自由にレバレッジ水準を設定することはできません。
投資の手間
不動産投資クラウドファンディングの方が、投資の手間はかかりません。不動産投資クラウドファンディングは、一度購入してしまえば、あとは償還までほとんど対応事項がないためです。実際の不動産経営や収入の分配などは、すべてファンド事業者やその関係会社が行うため、投資する手間はかかりません。
現物の不動産投資の場合、少なくとも購入時・売却時には多くの手続きが発生します。仲介業者や金融機関との交渉・取引の実行や登記手続きなどが必要です。
さらに、投資期間中は毎年確定申告が欠かせないため、さらに手間がかかる要因となります。確定申告は「報酬を支払って税理士に任せればよいのでは」と考える方も多いでしょう。しかし、実際には税理士に任せたとしても書類の準備・税理士への送付や内容説明などが発生するため、少なからず手間がかかります。
このほかに、物件管理にも気を配る必要があります。継続的に賃料収入を獲得するためには、入退去者の管理や入居者獲得、物件の維持・修繕やトラブル対応などのアクションが必要です。しかし、現実にはこれらの日々のタスクは管理会社に一任するため、投資家の日々の負担にはなりません。その代わり、管理コストを支払う必要があります。
そのほかの違い
不動産投資クラウドファンディングは、投資期間=ファンドの運用期間が決まっていて、ほとんどの銘柄の運用期間は数ヶ月~数年程度です。
現物での不動産投資は、投資家が売却タイミングを任意に決められるものの、売買のコストや賃料収入による収益性を勘案すると、数年~10年単位の長期投資の方がうまくいく可能性が高いです。5年以内で売却してしまうと売却を通じて発生した譲渡益の税率が高くなるため「最低でも5年」を一つの基準とする投資家も少なくありません。
また、投資物件の種類で見ると、不動産投資クラウドファンディングの方がさまざまな物件に投資が可能です。
各銘柄の投資先の例
サービス名 | 銘柄 | 主な投資対象 |
---|---|---|
利回り不動産 | 利回り不動産63号ファンド(新橋テナントビル | テナントビル |
CREAL | (仮称)CREALロジスティクス稲毛 | 物流施設 |
COZUCHI | 箱根町 強羅 事業用地 フェーズ2 | 別荘開発のための用地 |
TECROWD | TECROWD70号ファンド障がい者グループホーム「AMANEKU町田野津田町/葛飾東金町」 | 障がい者グループホーム |
TOMOTAQU | トモタクCF68号(RERESO 沖縄) | リゾート宿泊施設 |
現物の不動産投資において、個人投資家が賃貸住宅以外の物件にチャレンジする機会は限られています。個人の名義でオフィスビルや開発用地を取得するのは、容易ではありません。RENOSYなど一部不動産会社では、海外不動産の現物投資を取り扱い始めているものの、海外不動産も個人投資家が取り組む機会は限られています。
不動産投資クラウドファンディングとREIT
続いては、不動産投資クラウドファンディングと、上場している不動産投資信託「REIT」との比較です。どちらもファンド形式で不動産に投資する金融商品である分共通点もありますが、投資期間や価格変動リスクの違いなどは両者を考えるうえで重要な相違点です。
不動産投資 クラウドファンディング | REIT | |
---|---|---|
初期投資額 | 1万円~ | 数万円 |
利回り | 銘柄及び市場環境による | |
価格変動リスク | 小さい | 大きい |
NISA | 不可 | 成長投資枠で投資可能 |
取り組みやすい投資期間 | 数ヶ月~数年 | 自由 |
投資対象物件 | 1~少数物件 | 多数の物件であるケースが多い |
初期投資額
REITと不動産投資クラウドファンディングでは、初期投資額は近いものの、やや不動産投資クラウドファンディングの方が小口投資に向いています。不動産投資クラウドファンディングの最低投資金額は、近年1万円と10万円のものが多く見られます。
REITの最低投資金額はその銘柄の1口当たりの投資口価格(Webサイトでは便宜上「株価」と表現される場合もあります)次第です。2024年11月4日時点で見てみると、39,700円~610,000円で分布しています。
価格が安い銘柄であれば数万円で投資できますが、高額な銘柄へ投資するためには50万円以上の自己資金が必要です。ただ、最低数万円あれば投資ができるという点では、どちらも少額投資に適した手法といえるでしょう。
利回り
利回りは個別銘柄によって差異が大きく、どちらが高いとは一概に言えません。2024年11月4日時点のREITの予想分配金利回りを見ると「いちごホテルリート投資法人」が9%台で突出していて、それ以外では3%台~6%台です。
不動産投資クラウドファンディングも過去には10%を超える予定利回りを提示する銘柄も散見されましたが、他方で以下のように5%前後のファンドもみられます。
2024年9月以降募集されたファンドの例
ファンド銘柄 | サービス名 | 予定利回り |
---|---|---|
下北沢開発プロジェクト フェーズ1 | COZUCHI | 4.5% |
港区南麻布プロジェクト 1棟ビル追加取得 | COZUCHI | 5.0% |
sarugaku(代官山商業施設) | CREAL | 5.0% |
(仮称)CREAL学芸大学 | CREAL | 4.5% |
TECROWD70号ファンド障がい者グループホーム「AMANEKU町田野津田町/葛飾東金町」 | TECROWD | 8.5% |
なお、予定利回りと実際の収益性はREITの方が乖離するケースが多いといえるでしょう。不動産投資クラウドファンディングの予定利回りは、ファンド償還時にキャピタルゲインが出る等で上振れる可能性があるものの、実際には多くのファンドにおいて予定利回りがそのまま実現しています。
REITは、次に紹介するとおり投資口価格が日々変動するため、多くの場合において価格損益が発生します。キャピタルゲインが出れば収益性は高まりますし、逆に損失が発生するリスクも高いといえるでしょう。
価格変動リスク
REITは、不動産投資でありながら、価格変動リスクが比較的大きな資産です。価格変動リスクの点では株式に性質が近いといえるでしょう。
個人が投資対象とするREITは証券取引所に上場していて、日中であればリアルタイムで売買できます。基本的に買い需要が強まれば価格が上昇しますし、その逆であれば下落します。
需給の変化は、投資不動産の資産価値の変化などと常に連動するものではありません。投資先資産の価値が安定してして、賃料収入が着実に発生していても、たまたま売りが増えて価格が下落するリスクもあります。
「不動産投資は株などと比べて価格変動リスクが小さい」と一般に言われますが、REIT投資では、あまりこの特徴を実感できません。日々の需給変化に伴う価格変動リスクが大きい投資として考えた方がよいでしょう。
不動産投資クラウドファンディングも、本質的には投資先不動産の市況変化によって価格変化の影響を受ける可能性があります。たとえば、ファンド事業者の想定よりも安値で不動産を処分したとなれば、分配金が減って利回りが低下するリスクがあるのです。
しかし、実際にはほとんどのファンドが正常償還(すなわち元本を毀損することなく償還)を迎えていることから、実態としてREITと比べて価格変動の影響を受けにくい投資手法といえます。
その他の違い
その他の違いで特に重要なのは「NISA」を使えるかどうかです。不動産投資クラウドファンディングは、2024年11月時点でNISAの対象外です。収益は雑所得として総合課税の対象となります。他の所得と合算して計算されるため、所得が高い方の場合は税率が高くなります。
REITはNISAの成長投資枠で投資が可能なため、同枠組みで投資すれば収益に課税がされません。また、課税口座で取引したとしても、REITは税法上は株式等と同じように扱われるため、所得水準に関係なく20.315%が課されます。
NISAを利用しない場合の実際の税制上のメリットは所得水準や控除の影響にもよりますが、総合課税の所得税が23%以上となる課税所得695万円以上の層では、たとえ課税口座だとしても、REITの方が税負担を抑えられる余地が出てくるでしょう。
また、投資期間や柔軟性にも違いがあります。不動産投資クラウドファンディングは、投資期間が数か月~数年程度でファンドによって決まっていて、さらに募集タイミングでしか投資を始められません。
REITは上場しているため、市場が安定しているときであればすぐに投資を始められます。さらに、自分が売りたい時にいつでも売却できるため、投資期間も任意に決められます。
不動産投資クラウドファンディングとソーシャルレンディングの違い
ソーシャルレンディングの中には、不動産事業への融資を裏付けにファンド組成した事例がみられます。これらと不動産投資クラウドファンディングの違いは次のとおりです。
不動産投資クラウドファンディング | ソーシャルレンディング | |
---|---|---|
投資先 | 不動産 | 不動産を営む事業者 |
分配金の原資 | 賃料収入や売却益 | 事業者が支払う利息 |
最低投資額 | 1万円~ | 1万円~ |
価格損益のリスク | 相対的には大きい | 小さい |
投資家が負うリスク※ | 賃料収入の減少 不動産市況の悪化による売却損 | 不動産事業者の倒産等による貸倒 |
あえて違いを並べましたが、実際に双方に投資している個人投資家からは”両者の違いはあまり感じない”という声を聞きます。どちらのファンドも少額から投資できますし、一度投資してしまうと償還までは放置できます。
また、現在実績のあるファンドに限って言えば、不動産投資クラウドファンディング、ソーシャルレンディングともにほとんどのファンドが正常償還しているため、ファンドのリスクの違いを実感する状況も起きにくくなっています。
ただし、将来不動産市況が悪化するような局面が見られた場合、不動産に投資する不動産投資クラウドファンディングと、事業者の融資に投資するソーシャルレンディングで正常償還や利回り実績に違いが出る可能性もゼロではありません。両者の違いを正確に理解して投資を検討しましょう。
投資先
不動産投資クラウドファンディングは、ファンド資金を原資に不動産を購入して運営します。その不動産から発生する賃料収入や売買損益が分配金の原資です。ファンドの運用期間が比較的短いため、ほとんどのファンドでは償還前に不動産を売却する必要があります。売却時の価格が想定より変動すれば、それが分配金の増減要因となる可能性があります。
不動産事業者向けのソーシャルレンディングは、不動産を担保に設定するケースが多いものの、投資家から集めた資金は事業者への融資として運用されます。投資家の分配金の原資は事業者から得られる利息で、ファンドの満期時には事業者から融資が返済されて、その資金が投資家に償還されます。
価格損益のリスク
不動産投資クラウドファンディングは、ファンド償還時に投資不動産を売却する必要があります。このときの売買損益に応じて、分配金が変化する可能性があります。市況が良好であればキャピタルゲインにより分配金が増えますし、またその逆も考えられるでしょう。
ソーシャルレンディングの投資資金は、事業者への融資として運用されます。ファンド償還時には、事業者が借りた資金と同額を返済することになります。事業者が倒産して債務不履行などを引き起こさない限りは、投資元本がそのまま返済されます。構造上、ソーシャルレンディングの方が価格損益の影響を受けるリスクは小さいといえるでしょう。
原理的には以上のような関係となりますが、たとえば、CREALについては「予定利回りを超えることはない」と明記されています。キャピタルゲインが発生した場合に投資家に配分するかどうかは、ファンド運営事業者に裁量があります。
さらに、CREALやCOZUCHIなど複数のサービスは、過去の全ファンドが元本の毀損なく償還しているのが事実です。CREALのように全ファンドが正常償還していて、さらに予定利回りを上回ることがないのであれば、不動産投資クラウドファンディングであっても価格損益のリスクは相対的に小さいといえるでしょう。
投資家が負うリスク
双方のファンドに共通する「ファンド事業者の倒産リスク」を無視すると、不動産投資クラウドファンディングは「不動産事業が失敗するリスク」を負う一方で、ソーシャルレンディングは事業者の債務不履行(デフォルトリスク)を負います。
不動産投資クラウドファンディングは、投資先の不動産の空室が増えたり、価格が下落した利して収益性が低下すれば、それがそのままファンドの分配金に影響を与えます。
ソーシャルレンディングは、あくまで直接の投資先は不動産業を営む企業です。企業の不動産経営が悪化したとしても、企業の債務返済能力が維持されていれば、ファンドの分配金には影響を与えません。逆に、不動産自体に問題がなくとも、企業経営の失敗により債務返済が滞って損失をもたらすリスクがあります。
不動産投資の方法を整理して、自分に合った方法を見つけよう
現物の不動産投資やクラウドファンディング、REITと、不動産へ投資する方法には複数の手段があります。投資先が同じ不動産でも、それぞれ特徴が大きく異なります。自分の自己資金額や投資期間、許容できるリスクなどをもとに、自分にあった手段で投資を始めてください。
資産規模がある程度大きい方の場合、必ずしも一つの投資手法に絞る必要はありません。たとえば、現物の投資で毎月の賃料収入を獲得しつつ、REITで価格収益を狙う、といった方法も有効です。複数の投資方法を組み合わせて、不動産投資の中でリスクを分散するのも一つの方法といえるでしょう。
2024年11月4日時点の情報をもとに記事を作成しています。